健康保険から受けられる給付は、原則として被保険者期間に限られます。
病院などで、保険証が使えるのは退職日までとポスターで注意を喚起しているように、退職日を過ぎると、手持ちの保険証で病院にかかることはできません。

しかしながら、保険給付の中には、一定の条件を満たせば、資格喪失後に受けられる給付があります。
今回は、その説明をしたいと思います。

・傷病手当金/出産手当金
こちらは、どちらも要件は同じです。
まず、資格喪失日の前日の時点で1年以上継続して健康保険の被保険者であることが必要です。
この1年以上とは、転職等で資格の取得、喪失があったとしても、1日の空白もなければOKですし、途中で保険者が協会けんぽから健康保険組合に変わってもOKです。
また、資格を喪失した日において既に傷病手当金や出産手当金を受けていることも要件に含まれます。
ただし、傷病手当金については、退職前に有給休暇を取得したために報酬との調整が入って受けられなかった場合や、出産手当金も同時に受けられる状態で出産手当金が優先したために傷病手当金が受けられなかったとしても、有給休暇や出産手当金がなければ傷病手当金を在職中に受けられる状態であれば資格喪失後も傷病手当金を受けることができます。

・出産育児一時金
こちらも、まずは資格喪失日の前日の時点で1年以上継続して健康保険の被保険者であることが必要です。
そして、被保険者の資格を喪失してから6か月以内に出産した場合が対象になります。
この場合は、出産予定日ではなく、出産日が基準日となります。
なお、資格喪失後に健康保険の被扶養者となった場合は、自分に支給される出産育児一時金と、扶養者(自分を扶養する被保険者)に支給される家族出産育児一時金の選択となります。

・埋葬料・埋葬費
こちらは、以下の条件のうち、いずれかを満たした場合に支給されます。

  1. 資格喪失後の傷病手当金又は出産手当金の継続給付を受けている者が死亡したとき
  2. 資格喪失後の傷病手当金又は出産手当金の継続給付を受けていた者が、その給付を受けなくなった日後3か月以内に死亡したとき
  3. その他の被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後3か月以内に死亡したとき

なお、埋葬料・埋葬費については、3の要件の場合には、被保険者期間の長さは問われません。

そして、これらの給付は、すべて最後に加入していた健康保険の保険者(協会けんぽ又は健康保険組合)から支給されます。

このように、健康保険の資格を喪失しても受けられる給付がありますから、上手に使っていきたいですね。